- 現代中国経済論
学位(取得校)
- 経博(神戸大学)
研究テーマ
1.現代中国における「市場経済化」と経済改革の動向、特に財政・金融部門における変化について、公表された統計データなどを用いて実証的に分析を行います。
2.中国の不動産および土地市場をめぐって、地方政府の介入が市場価格にどのような影響を与えているのか、政府による土地の払い下げ価格のデータなどを用いて実証的に明らかにしていきます。
3.中国の近代以降における経済発展に果たした制度・慣習の役割について、主に歴史的な制度論の観点から文献を読みこんで理論的に考察していきます。
講義・ゼミの内容
担当経験のある科目
学部講義
中国経済論
この講義では、計画経済から市場経済への転換の中で高成長を遂げてきた中国経済が、現在どのような問題に直面し、またそれらの問題に対しどんな解決策が採られているかという点に焦点をあてていきます。授業の到達目標は、企業改革の歴史と現状、財政金融政策の動態、経済格差の拡大と対策、グローバル経済へのインパクト、そして日中関係の新たな展望、といった中国経済に関する重要なトピックスおよびその相互の関連を、特に日本との深いかかわりを踏まえながら理解することです。具体的には、日経新聞などの中国関連記事について、その背景を自分で簡単に解説できるようになることを目指します。
大学院講義
大学院の講義では、「農村と都市」「中央と都市」「経済成長と産業集積」「為替制度とマクロ経済政策」など、近年の中国経済に関するいくつかの重要なトピックについて、ミクロ・マクロ経済学を前提とした最先端の実証研究を踏まえながら、より深い理解を行うことを目指します。履修者は、現代中国経済に関する全般的な知識について、学部で開講している「中国経済論」の履修、あるいは指定したテキストの自習などを通じ、ある程度の理解度に達していることを前提とします。また、授業で取りあげるトピックに関しては、詳細な参考文献のリストを配布するので、興味を持ったトピックおよび参考文献に関してのレポートを作成し、授業期間中に提出してもらう予定です。
学部ゼミ
世界第二位の経済大国になった中国ですが、一方で国内に格差、腐敗、高齢化などの様々な課題を抱えており、今後の成長の持続性に関してもさまざまな議論・意見が出されています。学部のゼミでは、現代の中国経済がどんな問題に直面しているかを押さえたうえで、中国経済がそれらを乗り越えることは可能かどうか、中国経済に関するテキストの輪読を通じて検討します。また、他大学との対抗ゼミの実施や、WEST論文研究発表会などへの参加も積極的に行っています。
大学院ゼミ
中国を中心としたアジア諸国の経済発展について、開発経済学並びに制度の経済学の視点から検討を加えます。経済学に関する大学院レベルの知識、ならびに学術的な文献を読みこなせるだけの英語力を習得していることを前提とします。ゼミの最初の時間に今期輪読するテキストを決めます。その後は分担を決めてテキストを読んでいきます。
メッセージ
中国の経済を考えるということは、広い意味で地域経済という学問分野に入ります。経済をテーマにするとはいえ、経済だけではなく広く社会や政治とのかかわりを考えていく必要があります。例えば、尖閣諸島の問題で中国国内で反日暴動が起こりましたが、その背景には、中国国内の格差の問題があると言われています。中国に限らず異国の経済を研究する地域経済の面白さは、異質の文化、社会、政治なども含めて学びながら、理解を深めていくことにあります。中国の経済について勉強するのみならず、より広い視野でさまざまなことに関心を持って勉強していってもらいたいと思っています。
主要業績
- 「中国の財政・金融改革と地域間消費平準化」『アジア研究』第51巻第4号(2005年)
- 「中国の土地市場をめぐる諸問題と地方政府―「地方主導型経済発展」の変容―」『現代中国研究』第23号(2008年)
- 「中国内陸部における政府間財政移転の決定要因と再分配効果―県レベルデータを用いた実証分析(星野真との共著)」『アジア研究』第55巻第1号(2009年)
- 『現代中国の財政金融システム:グローバル化と中央-地方関係の経済分析』名古屋大学出版(2011年)
- 『超大国・中国のゆくえ 4 経済大国化の軋みとインパクト』(丸川知雄との共著、東京大学出版会(2014年)
- 『日本と中国、「脱近代」の誘惑:アジア的なものを再考する』太田出版(2015年)
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