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養父市 広瀬栄市長への「「農業特区」養父市における持続可能な農業・農村の発展に関する研究」の最終報告

2024/05/02

 経済学研究科・社会システムイノベーションセンターの衣笠智子教授は、衞藤彬史研究員(兵庫県立人と自然の博物館)、安田公治講師(青森公立大学)とともに、養父市・広瀬栄市長へ特区の規制緩和の効果と養父市の農業発展についての調査報告を行いました。養父市は2014年に国家戦略特別区域の指定を受けており、衣笠教授の研究チームは2019年より継続して養父市で特例として認められた一般企業による農地取得事業や養父市の農業者に対して定量的、定性的に調査を行ってきました。2023年度の調査では農林業センサスの養父市の個票データを用いた分析や2019年に行った農家アンケート調査に引き続き追加のアンケート調査を行うなど、これまでの調査の課題を改善して今まで把握できなかった情報を補完し、その調査結果をまとめて報告したものです。

 報告内容として、まず、養父市農家アンケート調査の結果から、後継者確保の⽀援や⽇役も含めた農作業負担の軽減の重要性、スマートフォンが急速に普及していることを活かした農業経営の提案、養⽗市の法⼈農地取得は農家への認知と期待、農業者に有益だと思える内容も盛り込むことへの重要性などを提言しました。つづいて、農林業センサスを用いた分析から、養⽗市でデータを使⽤した農業を⾏っている農家はまだ少ないこと、 法⼈でない⼀般の農家は、法⼈よりもデータ活⽤が少ない傾向にあること、 集落営農をしている事業体は、農業でデータを使⽤しない傾向があること、 施設野菜を重点的に販売している事業体は、農業でデータを使⽤する傾向があること、企業による法人化は、後継者確保には⼀定の成果が⾒込めることなどを提言しました。

 さらに、衛藤研究員が推進した、人口減少社会に対応した持続可能な農的暮らしの実現に資する居住環境に関する研究・マルチエージェントシミュレーション(MAS)を用いた一般企業による農地取得の影響についても報告されました。

 本研究チームの検証・分析は国家戦略特別区域の効果を実証するうえで重要な役割を担っており、2024年度以降もこれまでに行ってきた特区事業者や農業者に対しての聞き取り調査、アンケート調査の結果をもとに、より詳細な検証・分析を行うことでさらなる成果が期待されます。