経済学の基礎的な道具となる数学は,多くの学生にとって障碍となっているようである。特に,大学を卒業されて数年たってから大学院に来られた方にはこの障碍は超えがたく高いものに映っているようである。この講義の目的は,高等学校の水準から始めて,経済学における大学院レベルの数学的技術を了解可能なものすることである。特に,最大化問題にかかわる技術をマスターしていただきたい。
高等学校の数学から大学院レベルの数学に進むことは,ニュートンとライプニッツの時代から,コーシーやデデキントのそれへの1世紀をこえる数学的思考の発展を飛び越えることを意味する。この断絶を一気に越えることを要求すれば,学生への負担は大きなものとなろう。例えば,経済理論においては,需要関数や供給関数の連続性そのものが検討の対象となる場合が多くある。この場合の前提条件として,連続性について理解がなければならない。連続性の定義を知り,それを自然なものと受け取るには,集中的な思考と相当な時間とが必要である。
本講義では本格的な議論をすることは,あえてしない。むしろ,速習的で``判りやすい入門"を目指すものである。内容においては,経済学研究科の大学院レベルの数学に至る過程を解説することにした。その意味で,基礎的な入門講義となる。これは,必ずしも「非常に判りやすい」ことを意味しない。講義としては,ある意味では,高い程度の講義よりも困難なものであるかもしれない。なぜなら,第一に,易しい解説とはいえ,大学院レベルに必要な数学を視野においているためであり,第二に,本講義の時間数は1コマ90分のものが14, 5 コマと必ずしも多くないからである。
この講義を超えて厳密に学びたい方には,平日の講義ではあるが,(上級)経済数学を受講していただくのが適切であろう。
諸君の経済学研究に実りの多いことを祈る。
2005年4月1日
1.難しかった点
○分離定理を用いて,公共財のある経済の厚生経済学の第二命題を取り扱ったこと。
○数式の多さに驚いた。
○学部生には too much である。
2.興味深かった点
○競争的競争均衡の考え方。
○一見難解な理論にも強引な仮定や矛盾点があり,完璧な理論というものはそう存在しないこと。
○一般均衡について。
○微分を用いた方法と社会的厚生との関係。
○途中に脱線して話した内容。
○本題に入る前に,考え方の説明があったので,理解が進んだ。
3.聞きたかったテーマ
○メカニズムデザインが聞きたかった。
4.良くなかった点
○競争均衡を詳しく説明する必要はなかった。
○社会的厚生との関連はいま少し詳しい説明が必要である。
○厚生経済学の基本定理はいま少し省略できるのではないか。
○サミュエルソンルールに時間をかけ過ぎである。
○分離定理を用いた議論は必要ないのではないか。