神大経済について

研究科長からのメッセージ

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歴史に熟成された「美」と共に


 まことに小さな国であった日本が、近代化へと邁進しつつあった1902年(明治35年)3月27日、勅令第98号によって「神戸高等商業学校」が設置されました。神戸大学設立の年です。以来百十数年の歴史の中で、実に多くの有能な人材を、実業界や官界、政界へと輩出してきました。焦土と化した神戸の街が国際港としての活気を取り戻しつつあった1953年(昭和28年)には、大学院経済学研究科が設置され、わが国の経済学研究の拠点の一つとして多くの有能な研究者を育ててきました。このように、神戸大学経済学部・経済学研究科の歴史は、まさに日本の大学の経済学教育・研究の軌跡そのものであると言っても過言ではありません。皆さんは、六甲台正門の階段を上がり切った時の、淡い褐色に包まれた重厚な建物に、深く永い静かな時の流れを感じたはずです。

 ところで、私たちが学ぶ「経済学」(economics)とはどのような領域や活動を意味しているのでしょうか。言葉の起源は、世界史の年表の出発点に位置するほど古いのです。古代ギリシャの人々は、家(oikos)の活動を無駄なく行うためのルール(nomos)とは何かということを考えていました。このオエコノモス(oikos-nomos)こそが、経済という言葉の起源なのです。勿論当時は生産活動を営む企業は存在しませんでしたが、oikosを「家計・企業などの民間経済主体」と広く捉えれば、今日使われている意味合いとほぼ同じです。また古代ギリシャの人々はoikosに「都市国家」としての意味も持たせていたようですので、国家における経済運営のあり方(あるいは国の治め方)として位置付けることもできます。(私の想像ですが)、もしかしたら古代ギリシャの人々は、oikosの言葉に「グローバルな世界」をイメージしていたかもしれません。世界全体、地球全体のなかで貧困や環境問題を考えるという壮大な視野も広がってきます。

 皆さんは「経済学」とは、家計はどのようにしたら裕福に暮らすことができるのか、企業は如何にして収益を増やすことができるのか、そのためにはどのような手立て(例えば金融投資や資産運用の手法など)があるのかという、比較的狭い分野の学問だと考えておられたかもしれません。しかし経済という語源からも分かるように、経済の領域、活動は、家計や企業にとどまらず、国家や世界全体(あるいは地球全体)にまで及ぶ領域の中で、人間活動の様々な側面を捉える、実に広いものであることが理解されるはずです。したがって経済学という分野は、経済という広大な領域をカバーすべく、実に広範かつ多面的であり、それ故きわめて魅力的な学問です。そして神戸大学経済学部・経済学研究科には、こうした経済学の魅力を、余すところなく皆さんに提供できる体制を整えています。以下ではその一端を紹介してみることにしましょう。

 現在経済学研究科では、8大講座のもとに経済学系のみで50数名という国内最大規模のスタッフ陣から構成されています。経済学の専門領域をほぼすべて網羅する教育、研究体制を整えていると言っても過言ではありません。学部カリキュラムは、基礎から応用への段階的な履修が可能な体系的教育システムとなっています。また経済学を学ぶ上で重要な資質となる数学と英語の能力に秀でた人材を育てるべく、数学選抜、英数選抜、総合選抜という新しい入試制度も2018年からスタートしています。  

 学生の国際的な交流が盛んであることも、経済学部・経済学研究科の大きな特徴です。 海外協定大学での留学を組み合わせ、英語で経済学の専門的知識を習得するIFEEK(5年一貫経済学国際教育プログラム(International Five-year Economics Education Program at Kobe))を2013年にスタートさせました。IFEEKは学部2年生から始まり、大学院修士課程まで最短5年間で修了することができるとても魅力的なプログラムです。修了生は様々な分野に就職しており、いずれも第一線で活躍しています。さらに大学院修士課程においてすべての講義が英語で行われるGMAP(Global Master Program)、EUを中心として欧州について多面的な角度から学ぶことができるEUエキスパート人材養成プログラムKUPES(Kobe University Programme for European Studies)も準備されています。また経済学と法学の学際的な領域を深く学んでいく法経連携専門教育プログラムもあり、同プログラムは海外での学修機会も取り入れる形で発展しつつあります。そしてこのような充実した教育体制を持続できているのは、学部・大学院の卒業生、修了生から組織されている「凌霜会」の深いご理解と多大なるご支援があることに、我々は心より感謝しています。  

 皆さんが集い学び、教員が日夜研鑽に励み、自然が静かに四季を奏でている。こうした営みが1世紀以上にわたって繰り返されていることに、私は「大学における美」を感じます。歴史に熟成された真の美こそ、神戸大学経済学部・経済学研究科の美しさに他なりません。2022年、神戸大学は創立120周年を迎えます。皆さんと共にさらなる美の進化に尽力したいと思います。

経済学部長・経済学研究科長
松林 洋一


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