教員紹介

茂木 快治

HOME > 教員紹介 > 講座別一覧 > 計量・統計分析 > 茂木 快治

茂木 快治 MOTEGI Kaiji 講師

E-mail

Office hours

予めメールにてアポイントメントを取ってください。

URL

http://www2.kobe-u.ac.jp/~motegi

研究テーマ

計量経済学(特に時系列分析)

私の専門分野は、計量経済学(すなわち経済データの統計的分析)です。現実経済のメカニズムを解明したり、経済理論の妥当性をデータに基づいて検証したりする際、できる限り精度の高い統計的分析を行うことが求められます。そのような問題意識のもと、私はいくつかの分析手法の改良とその応用に取り組んでいます。

経済データは、時系列データとクロスセクション・データの2種類に大別され、それぞれ異なる方法論が必要となります。私はもともと、マクロ経済予測と直結する時系列データの分析に関心を抱いていましたが、最近ではクロスセクション・データの分析も積極的に行っています。以下では、私が特に力を入れている研究テーマを3つご紹介します。

1.観測頻度の相異なる時系列データの分析

従来の時系列分析は、分析対象のデータの観測頻度がひとつに揃っていないと実行不可能でした。例えば、多くの国において、失業率のデータは毎月公表されるのに対して、国内総生産(gross domestic product, GDP)のデータは3か月に一度しか公表されません。そのため、両者の相互依存関係を分析する場合、月次の失業率のデータを四半期ベースに集計する必要がありました。そのようなデータの集計化は情報の損失を招き、分析精度を低下させます。月次データは月次のまま、四半期データは四半期のまま、すべての情報を余すところなく使い切れば、より高精度の統計分析が可能となるはずです。

観測頻度の相異なる時系列データを同時に分析する方法は、2004年頃から欧米を中心として普及し始め、今日では"Mixed Data Sampling (MIDAS, マイダス)" や "Mixed Frequency" という呼び名で広く知られています。近年、多数の研究者が、MIDASの有効性を報告しています。

私は2009年8月から2014年5月まで、米国のノースカロライナ大学チャペルヒル校の経済学部博士課程で学びました。その頃から現在に至るまで、MIDASに関する理論的・実証的研究を続けています。第一に、複数の観測頻度が混在する状況下のグランジャー因果性(予測力向上可能性)を定義し、その検定方法を考案しました。第二に、米国経済を分析対象とし、週次の長短金利差から四半期の経済成長率へのグランジャー因果性の有無を検証しました。第三に、MIDASのアプローチに基づき、日本の「失われた10年」における民間企業設備投資の低迷の要因を再考察しました。


【写真】2014年12月、スペイン・バルセロナのポンペウ・ファブラ大学にて25th (EC)2 Conference に出席し、MIDASに関するポスター発表を行いました。

2.ホワイトノイズ検定の開発と株式市場への応用

ある時系列の過去の値と将来の値との間に相関関係が存在しないとき、その時系列はホワイトノイズ(white noise)であると言われます。ある時系列がホワイトノイズであるか否かを検定することは、初歩的な問題と捉えられがちですが、実はかなり高度な問題です。なぜならば、ホワイトノイズ性は系列独立性(serial independence)よりもかなり弱い条件であり、そのような弱い条件の下での仮説検定の構築には困難が伴うからです。

私は2015年頃からホワイトノイズ検定の開発に取り組んでおり、各ラグにおける相関係数の最大値に基づく新たな検定方法を提案しています。様々な数値実験を行った結果、新たな検定は、従来の検定と比べて、大きなラグを伴う系列相関を検出しやすいことが判明しました。また、本研究のひとつの応用事例として、株式市場の効率性の検定(すなわち株価変化率のホワイトノイズ性の検定)も行っています。

【写真】2016年9月、ニューヨークのコロンビア大学にてNBER-NSF Time Series Conference に出席し、ホワイトノイズ検定に関するポスター発表を行いました。

【写真】2017年9月、ハワイ州ホノルルのアラモアナ・ホテルにて、神戸大学大学院経済学研究科主催の 3rd Annual International Conference on Applied Econometrics in Hawaii に出席し、株式市場の効率性の検定に関する発表を行いました。

3.コピュラモデル、欠損データ分析、因果推論の融合

私は最近、クロスセクション分析の枠組みで、コピュラモデル(copula model)、欠損データ分析(missing data analysis)、因果推論(causal inference)の融合に取り組んでいます。コピュラモデルは、多数の経済変数の複雑な相互依存関係を、比較的少ないパラメータで記述できる有用なモデルです。

従来のコピュラモデルは、データが完全に観測されるという前提条件の下に成り立っていました。しかし、現実の経済データには、様々な要因で欠損が生じます。例えば、個人を対象とするアンケート調査では、所得や年齢などの個人情報に関して回答を得られないことが多々あります。このような場合、従来のコピュラモデルを当てはめることはできません。

私は2017年5月頃から、欠損データに対するコピュラモデルの推定方法の開発に着手しました。その手法は、因果推論に依拠する新しいものです。因果推論は処置効果(treatment effect)の推定とも呼ばれ、計量経済学で最も重要な研究テーマのひとつです。

ある処置(例えば投票の電子化や消費税の導入など)を実行するか否かという二者択一と、データが観察されるか否かという二者択一は、概念的に似ている部分があります。私はその類似性を利用してコピュラモデル、欠損データ分析、因果推論の三者を結びつけようとしています。このような試みはこれまで存在せず、今後大いに発展の余地のある研究テーマであると考えています。

【写真】2018年6月、香港大学統計・保険数理学部のセミナーにて、欠損データの下でのコピュラモデルの推定に関する発表を行いました。

講義・ゼミの内容

【学部講義】
開講していません。

【大学院講義】
“Analysis of Stationary Time Series” (2018年度第1クォーター開講)
“Analysis of Nonstationary Time Series” (2018年度第3クォーター開講)

これらの講義は、時系列分析の理論と方法論に関する大学院生向け英語科目です。これらの講義の目標は、経済時系列データの正しい分析方法を身に付けることです。基本的に理論と数値実験を重視した授業構成ですが、時間の許す限り実証分析の事例も紹介します。

教科書は、Walter Enders (2014, 4th edition) “Applied Econometric Time Series”, Wiley です。参考書は、James D. Hamilton (1994) “Time Series Analysis”, Princeton University Press とEric Ghysels and Massimiliano Marcellino (2018) “Applied Economic Forecasting Using Time Series Methods”, Oxford University Pressです。

2018年度第1クォーター開講の“Analysis of Stationary Time Series”では、autoregressive moving average (ARMA), generalized autoregressive conditional heteroskedasticity (GARCH), vector autoregression (VAR) など、定常時系列について学びます。

2018年度第3クォーター開講の“Analysis of Nonstationary Time Series”では、単位根(unit root), 見せかけの回帰(spurious regression), 共和分(cointegration), 多変量誤差修正モデル(vector error correction model, VECM)など、非定常時系列について学びます。

多くの経済時系列は、それ自体は非定常であり、伸び率をとると定常になります。定常時系列と非定常時系列の両方を適切に扱えるようになると、研究の幅が大きく広がります。

なお、過去および現在の教材の一部は、私の個人ウェブサイトで公開しています。各自参照し、予習・復習に役立てて下さい。

          

          

          

【写真】2016年度第3クォーター開講の”Time Series Analysis”の授業風景です。

メッセージ

“Analysis of Stationary Time Series”と“Analysis of Nonstationary Time Series”の授業は、私自身毎回楽しみにしています。時系列分析の理論と応用を学ぶことは、楽しく有意義なことであると考えます。経済予測の精度を高めたり、今まで知られていなかった変数間の相互依存関係を発見したりすることは、学問的にも社会的にも有益な貢献となります。受講生の皆様に時系列分析の面白さを少しでもお伝えできるよう努力します。

主要業績
  • 【採択された論文
    [1] E. Ghysels, J. B. Hill, and K. Motegi (2016). Testing for Granger Causality with Mixed Frequency Data. Journal of Econometrics, vol. 192, pp. 207-230. 
    [2] K. Motegi and A. Sadahiro (2018). Sluggish Private Investment in Japan's Lost Decade: Mixed Frequency Vector Autoregression Approach. North American Journal of Economics and Finance, vol. 43, pp. 118-128.
    [3] E. Ghysels, J. B. Hill, and K. Motegi (2018). Testing a Large Set of Zero Restrictions in Regression Models, with an Application to Mixed Frequency Granger Causality. Journal of Econometrics, conditionally accepted in June 2018.

    【ワーキングペーパー
    [1] J. B. Hill and K. Motegi (2018). A Max-Correlation White Noise Test for Weakly Dependent Time Series.
    [2] J. B. Hill and K. Motegi (2018). Testing for White Noise Hypothesis of Stock Returns.
    [3] S. Hamori, K. Motegi, and Z. Zhang (2018). Calibration Estimation of Semiparametric Copula Models with Data Missing at Random.
    [4] C. Ai, O. Linton, K. Motegi, and Z. Zhang (2018). A Unified Framework for Efficient Estimation of General Treatment Models with Estimated Stabilized Weights.
    [5] K. Motegi, X. Cai, S. Hamori, and H. Xu (2018). High-Dimensional Copula Models with Mixed Frequency Data and Asymmetric Volatility.
    [6] L. Yang, K. Motegi, and S. Hamori (2018). Systemic Risk and Macroeconomic Shocks: Evidence from US Agricultural Commodity Markets.

神戸大学研究者紹介システム

全学データベースへのリンク

PAGE TOP ↑