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在学生・修了生の声

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本当に追求したいテーマに取り組む

○社会人として経済学を学ぶ意味yamashita1
なぜ社会に出て何年もたってから、わざわざ経済学を学びに大学院に入ったのか。
文学部を卒業してから企業に勤め、グローバリズムの荒波にもまれながら転職を重ね、並行して経済や政治のことを考えるNPO活動を続けてきたことが、大学院で経済学を学ぶ道につながりました。営利追求の企業活動だけでも、税金による行政だけでも補えない何かがある。今のお金の流れが次の富を生み出しているように思えない。かといって市民活動を支える資金の流れも見えてこない。閉塞感の中で、たまたま神戸大学で勤務することになり、ふと考える時間が生まれたときに、大学院に進学してみようかな、という軽い気持ちがきっかけでした。企業勤めを続けていればMBAという選択肢もあったかも知れませんが、いろんなセクターが社会を形成していることを知り、社会の問題を深く考えたくなった時期に経済学を学ぶという選択は自然なことでした。

○難しいけれど楽しい学び
とはいえ、文学部出身の私が経済学を学ぶのは簡単な道ではありません。微分を解くなど大学入試以来のことです、入学前には数学の補習授業が用意されるという優しいサポートがありましたが、これから待ち受ける難解な講義を予感させるのに十分でした。実際に授業が始まってみれば、統計学の基礎がないと計量経済学は相当ハードルが高いもので、結局2回履修しました。大したもので毎日統計や計量の本を読んでいると、時間をかければそれなりに理解が進むものです。数式だらけのペーパーも最初は暗号だらけのようだったのが、そのうちどこが分からないのか分かるようになってきて、分からないことへの恐怖感は随分なくなりました。
修士課程の時に感じたことは、絶対唯一の正解などない、ということで学究の淵をのぞきこんだところで修了しました。2年間で執筆する修士論文では追求できなかったテーマもあり、せっかくドクターに進んだのだからすぐに答えが出なさそうな問いにみっちり取り組んでみたい、という気持ちがありました。
そこでゼミでは、本当に取り組みたいテーマを見極めるのに、随分時間をかけました。先生にご助言いただいて、包丁の使い方(実証分析方法)を学ぶことと、食べたい料理(取り組みたいテーマ)をイメージすること、どんな材料(解析するデータ)があるのか知ること、テーマに近そうなレシピ(先行研究)を探すこと、を並行して進めました。レシピはあれこれ自分の思いを発表する中で、「経済心理学」というジャンルが近そうだというナイスパスを出していただいてから方向性が見えてきました。
私が所属するゼミは地方自治体勤務の方が多く、プロとして行政の第一線で活躍なさっている方ばかりです。その方々の前で自分の形にならない思いを何度も聞いていただきましたが、否定されることはなく、同じような思いで仕事をなさっているという言葉をいただいて、この方向で進んでいいんだと随分勇気づけられました。辛抱強く導いてくださる先生や暖かく支えてくださるゼミのみなさまに出会えて本当によかったと思っています。

○研究へのスタンス
私の研究テーマは、次のキャリアにつなげようとか、今の仕事に生かそうという動機と異なるために、珍しいケースかも知れません。100%自分のための研究、と思ってたどり着いたテーマです。かといって利己的なテーマ設定でもないと思っています。平たく言えば、本当に豊かな社会とはどういう状態なのかを人々の価値観(幸福感)と経済データから解き明かしたいという夢想のようなテーマで、経済学にぎりぎり引っかかるかどうか、という境界線にいるのかも知れません。
でも何よりも自分のテーマを思う存分追求できるというのは、それだけでとても楽しいことです(時間はなかなか見つかりませんが!)。今までの体験や願いの集大成といった思いもあります。私の社会人人生の前半はアメリカ的価値観の中にあり、世界市場は制覇できてもこのままのペースで持つのだろうか、という大きな問いがあったのちに、後半に入ってヨーロッパの多様な価値観に触れる日々が訪れました。自分の力量で扱える大きさの研究テーマに着地するという課題はありますが、積み上げてきた体験のエッセンスから生じる問いを拾い上げられる点が社会人院生ならではの醍醐味だと思っています。
幸運なことに、おそらく私のような社会人院生がいるために、神戸大学では倍の年数をかけて修了できる長期履修制度が設けられ、土曜日開講の授業も充実しており土曜日のみで学位が取得できるようにカリキュラムが組まれています。毎週東京や四国など遠方から通学されてくる方も珍しくありません。ミクロ、マクロといった経済学の基礎も優秀な成績で単位を揃えるには時間的制約もあることから、社会人対象の学力試験制度はとても助かっています。

○仕事との関連
大学院で学ぶことは、研究テーマは関係なくとも仕事にも良い影響があったように思います。複雑で抽象的な思考を訓練することは、仕事のスキルアップにも役立つ面があるのかも知れません。問題解決の手順づくりはうまくなりますし、分かること分からないことを整理して、問題のコアを見極めること、粘り強く問題を解くこと、問いを立て続ける力は知らず知らず培われているように思います。
私の研究テーマも、職場とは関係なく設定していましたが、仕事で考える時間も多いことから、教育による人的資本の充実が幸福度や経済成長に与える影響を実証できると理想的です。さらに進んで、新卒でストレートに就職する道だけでなく、社会に出てから何度でも軌道修正できるようなフレキシブルな社会制度と経済成長との関係が明らかにできればなお理想的です。yamashita2少なくとも私自身の体験では、社会人大学院生は費用に対してその効用は極めて高く、無差別曲線も右上に移行し続け、さらに社会への波及効果は計り知れないように思われます。
人生は長く、曲り道なキャリアほど人生は豊かになるような気もします。社会人経験があった後で経済学を学ぶ意義も大きいですが、何よりもよき師よき友に出会える環境も大切ではないでしょうか。学びたいという動機さえあれば、全力でサポートしてくれる環境がここにはあります。社会人の方にこそ、神戸大経済の大学院生をぜひおすすめします。

 経済学研究科博士後期課程(2013~) 山下 奈美

 

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