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在学生・修了生の声

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目に見えない混沌とした経済活動を明らかにし、世の中の片鱗をつかむ

○進学にあたりyamashita1
 私はメーカーに勤務しております。学生時代は情報工学を専攻し、入社して以降、これまで様々な分野の情報システムの開発に従事してまいりました。
開発現場にいますと、担当する顧客の業界状況については話題として挙がるものの、経済に関する話題となると景気の動向といった極限られたものでした。
そうした経済学に関してバックグラウンドがない私がなぜ経済学を学ぼうと思い始めたかと言いますと、一つはリーマンショックを契機に"世界経済はつながっている"と痛感したからでした。勤務先の業績も例外なく大きな影響を受け、自分自身が思っていた以上にグローバル化が進み、経済活動も自国の経済だけに目を向けていては不十分であることに気付かされました。少し大袈裟かもしれませんが、当時これ程まで混沌とした経済状況の中で生きていくには、世の中を読み解くなにか羅針盤的なものが自分には必要だと思ったことを覚えております。私にとってはそれが経済学でした。人は生活をしている以上、少なからず経済活動に参画しているため、経済学を学ぶ上で「文系だから…」「理系だから…」といった括りは関係なく、誰もがある程度の知識として身につけておくべき学問分野だと思い始めたのもこの時期でした。
 以降、何冊か経済に関する新書を手に取り読みましたが、経済学の知識が乏しい状態では、著者が述べている内容が果たして本当なのか、など自分の中で判断ができないことに気付き、まず知識を得るには然るべき教育機関に身を置き学ばなければならないと考え始めました。進学先を検討する上では、社会人である以上、働きながらの学べることを第一条件に、特に実践経済が学べ、また学ぶ上でも圧倒的な教員数と扱う分野の広さから神戸大学への進学を決意しました。

○勉学を共にした仲間
isobe1  社会人学生である皆さんは、年齢、職業、バックグラウンドも様々で、多忙の中、時間を捻出しながら学んでおります。
大学院に進学しなければ、決して会うことやお話しする機会がない方々と毎週土曜日に同じ机に肩を並べ同じ経済学を学ぶと言うのは、自分にとっては非常に新鮮でした。そして皆さん非常にモチベーションが高く、お互いに刺激を受け、時には励まし合いながら、講義で行き詰まった箇所があれば教え合い、過ごして行くうちに自然と一体感が生まれていきました。学び始めた頃は、進学はしたものの本当についていけるのかが毎週不安でしたが、そうした不安もいつしかなくなりました。

○充実した学習環境
 最近は社会人向けに通学の利便性を考慮したサテライトキャンパスなど備えた大学が増えている中、神戸大学では六甲台キャンパスで講義が行われます。主な講義は神戸大学を代表する国登録有形文化財でもある六甲台本館で行われ、かつて多くの諸先輩方が学んだ校舎で学べたことは、サテライトキャンパスでは決して得ることができない大変貴重な体験となりました。学習環境としては、社会人大学院生向けに独立した自習室が用意されております。ここでは席が個別のブースに分かれており、集中して学問に打ち込めるようになっております。複合機も用意されレポートやゼミ報告資料などの準備も可能です。図書館も社会科学系向けに独立しており蔵書の数も非常に多く、調べものの際に大いに活用させて頂きました。また図書館自体も国登録有形文化財でもあり、大閲覧室は大変趣があり、一度訪れることをお勧めします。また、講義が行われる土曜日も学食や生協は営業をしており、学生生活を送る上で様々なサポートが受けられます。

○多分野にわたる講義の数々
 経済学と一言でいいましても分野は様々で多岐に渡ります。講義はマクロ経済学、ミクロ経済学をはじめ、計量経済や経済史、金融・公共・産業分野をはじめとした経済、各国の経済など多数用意されており、非常に充実しております。時間が許せば平日の講義や夏期休暇中に開講する集中講義も履修は可能です。例えば、「経済史」については、世界史の苦手な私でも欧米の中世から近代にかけての様々な歴史的出来事と絡めて世界経済の礎を知ることができ、「地域経済統計論」では、様々な公的統計表から傾向をつかみ、そこに潜む課題を読み解くことで、地域経済に対する問題意識が高まりました。
 また、学外からの講師をお招きした講義も用意されており、日銀の現役の職員から直接講義を受けられるなど、貴重な講義も用意されております。 中でも民間企業に勤める私にとって大変興味深かったのが「公共経済学」でした。"経済" というと経済活動の中で生み出される利潤や効用を中心に世の中が回っているという資本主義的イメージでいた私にとっては、それだけでは世の中や国家が発展しないことを教えて頂いたのが、この分野でした。更に理解を深めたいと思い始め、講義に留まらず、サブゼミ(第2ゼミ)としても参加させて頂きました。ゼミ生の皆さんは各自治体に勤務されている方が多く、普段なかなか聞くことの出来ない公共現場での課題など知ることが出来ました。
また、自身の研究テーマに対しても、民間にはない視点からの貴重なご意見を賜り大変有意義な時間を過ごさせて頂きました。
受講した全ての講義を通じて共通して言えることは、どの教員も大変熱心であり、いつも頭が下がる思いでした。

○研究への追求
 先に紹介しました様々な経済学を受講し、知識を身に付け観点を養いながら自身の研究テーマについても深く掘り下げていくことになります。私自身は経済状況に大きく左右される雇用について関心をもっていたため、数ある経済学分野の中でも「労働経済学」を専攻しました。
特に技術革新のスピードがはやくサイクルが目まぐるしいIT業界に従事するソフトウェア技術者の動向に着目して研究を進めました。研究を進めるにあたり、先行研究の調査や研究分野に関連した論文を掻き集めては読込み、特に私は過去の動向(データ)から傾向を分析する実証研究を行うため、研究対象データの入手が必須となり、該当データを保有する公的機関へ依頼するなどしました。
 次に入手したデータを分析する知識が必要になります。それが統計学になります。私はスキルアッププログラムを選択していたこともあり、実証研究で分析を行うには統計学の知識が必須になるため、多少数学の知識はあったものの、復習も兼ね講義を履修しました。しかし、講義を通じて統計学の本質を知ると、いつしかデータから未来を予測する分析方法の魅力に惹かれ、講義を終えた後も関連書籍を読むまでになりました。分析には、統計分析ソフトを利用しますが、ソフトウェアの操作についても講義が用意されていますので、操作に自信がない人も心配はいりません。
 各自研究を進めるにあたっては、ゼミに所属することになります。私が所属したゼミでは同じ分野で研究を進めている研究員、博士、そして私達の修士の構成で、先行研究紹介や自身の研究報告などを行います。そこでは様々な議論が行われ、同じ分野でも多角的な考えや意見を交換することで、より深い研究を進めることが出来るようになります。更に個別ゼミも行われ、先生から直々に指導を受け研究内容のブラシュアップを行い、精度を高めて行きます。研究途中、なかなか思うような結果が得られず思い悩んだり、時には焦りを感じることがあると思います。
ですが、決して1人で悩まず先生を始めゼミ生や同級生に相談することで、新たなアプローチ方法などがきっと見つかると思います。決して諦めずに入学当時抱いた志を思い出し、根気強く向き合っていきましょう。

○学生生活を振り返り
 学生生活を振り返ると、この2年間は長いようで短かったですが、入学前と比べ少なくとも自分自身成長出来たと実感しております。あと、自分でも不思議なことに講義の度に新たな発見が得られる週末が楽しみで仕方がありませんでした。在学中の2年間の内、残りの1年は転勤のため、東京から神戸への通学となりましたが、殆ど休むことなく通い続けられたのは、週末に一度、仕事以外に学術環境に身を投じ、思考の切替えをすることが恐らく自分にとって合っていたのかもしれません。
 社会に出て勉強する機会となると、多くは会社の研修や資格対策などになりがちですが、誰しも社会で生活していると様々な経験を通じて、世の中についての疑問や課題を感じる瞬間が少なからずあると思います。日頃より自らがなにかしらの課題意識をお持ちで、またそれが経済学に関することであれば、是非、その解を見つけに神戸大学で学ばれてはいかがでしょうか。きっと解決への糸口は見つかると思います。

○余談:大階段で思ったこと
 私は登校時、六甲台本館に向かう際は、必ず正門前の大階段をのぼることにしていました。
 ある日、いつものように階段をのぼっていますと、ふとあることに気付きました。正門を入り本館を望むと本館の片鱗しか見えません。大階段に近づくと本館は一旦見えなくなり、階段の中間にある踊場までのぼると、先ほどのぼる前よりは本館の姿が見えるようになります。しかし全貌はまだ見えません。
そして残りの階段をのぼりきると初めて本館の全貌を見ることができます。階段の一段一段を講義やゼミでの積み重ね、前半及び後半の階段を修士1、2年とし、本館を明らかにしたい研究の成果と置くと、不思議と何か重なるものを感じ、それはまさに修士で過ごした2年間に通じるものがあると気付き感慨深いものを感じた次第です。一つの見方に過ぎませんが、神戸大学へ訪れた際は、感慨にひたりながら登ってみてはいかがでしょうか。

  2015年 博士課程前期課程修了 磯部 好孝

 

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